困窮する無保険外国人「2倍3倍医療費制度」の廃止を

この記事では、
・生活に困窮している無保険外国人から通常の2倍3倍の医療費を請求している病院があること
・そういった病院が増えていること
・「普通」の請求に戻すべきこと
を示します。

■通常の2倍3倍の医療費を請求
現在、仮放免者など無保険の外国人には通常より多い医療費を請求する病院が増えています
東京都新宿区にある国立国際医療センターは通常の2倍。
ある国立大学病院は通常の3倍でした。
その他の実体験についてはこちらの記事をご参照ください。

■2倍3倍の背景
医療機関が無保険外国人に通常の2倍3倍の医療費を請求する背景については以下のようなことが指摘されています。

政府は近年、富裕層の訪日外国人を想定した「医療ツーリズム」を成長戦略の一つとして位置づけている。これが訪日外国人に対する医療費の高額設定につながり、困窮する外国人にも影響を与えているのだ。

毎日新聞,2021年11月7日「医療費300%負担も 無保険の外国人がさらされる命の危機」
https://mainichi.jp/articles/20211106/k00/00m/040/078000c

つまり、「2倍3倍医療費制度」はお金持ちの外国人旅行客(無保険)からより多くの医療費をもらう制度として始まりましたが、蓋を開けてみれば、お金のない困窮する外国人(無保険)に通常の2倍3倍の医療費を請求し、結果として困窮者をより医療から遠ざける制度となり果てているということです。
医療機関の窓口では、無保険の外国人に対して、その実態を見ることはせずに、無保険であるならば機械的に2倍3倍の医療費を請求しているということでしょう。これは「意図せざる結果」であり、明確に制度の建付けの欠陥です。困窮者を排除するためにつくった制度ではないと信じています。早急な立て直しが必要です。

■「泣きっ面に蜂」の国民健康保険に加入できない外国人
2022年8月現在、制度上、国民健康保険に加入できない外国人は約10万2000人程度いると推測されます(https://yumaosawa.com/?p=413)。
この中には仮放免の方もいます。難民の方もいます。日本生まれ日本育ちの子どもたちもいます。
仮放免で難民の3歳男の子(3歳)は心臓に疾患があります。国民健康保険に加入できないので全額自己負担。手術しなければいけませんが、その手術代は180万円で困難。「普通」に治療することができません。

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このように通常でも仮放免者などは医療にかかることは極めて困難な状況です。
そして、いま、このような弱い立場に置かれている外国人に対して通常の2倍3倍の医療費が請求され続けています。「泣きっ面に蜂」状態です。
100歩譲ってお金持ちの旅行客は2倍3倍の医療費を請求できるとします。しかし、上記記事でも書いたように、現実には日本に10年以上暮らしている仮放免者が2倍の医療費を請求されています。当然ながら、お金持ちでもないし、旅行客でもないです。日本に「定住」し、地域で地域市民と一緒に暮らしている人です。そうした人たちに通常の2倍3倍の医療費を請求するのは道理的でも論理的でもないはずです。

■増え続ける「2倍3倍病院」
2020年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18704.html)」には、「2倍3倍病院」がどれくらいあるのかというデータが示されています。

厚生労働省による外国人患者の受け入れ実態調査(2020年度)では、回答した4380の医療機関のうち、およそ4分の1が、保険未加入の外国人に対し、診療価格を通常より高く設定していました。外国人患者の受け入れが多い医療機関に限ると7割近くが通常より高く設定し、2倍以上で設定している病院は27.9%にのぼりました。

NHK ハートネット,2022年8月16日「在留資格がないから、しようがない?(3)大澤優真さんの医療支援」
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/673/

診療報酬点数表を活用していた回答(n=4,380)のうち、約4分の1の病院が1点あたり10円を超える診療価格の設定をしていた。2019年の約1割と比べ増加が見られた

令和2年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果 調査結果(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18704.html

この調査からは、
・約4分の1(25%)の医療機関が通常の医療費より高い診療費を請求していること
・2019年度は約10%だったが、2020年度は約25%となり、増加傾向にあること
がわかります。
このままだと、困窮する無保険外国人が受診できる病院がなくなってしまいます。

令和2年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果 調査結果(概要版)
令和2年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果 調査結果(全体版)

■「普通」の請求を
このように、「2倍3倍医療費制度」は明らかに制度的な欠陥があり、早急に見直されるべきです。
医療費をタダにしてほしいとは言っていません。
「普通」に医療費を請求してほしいということです。そこに無理な理屈はないと思います。
そうしなければ助かる命が助からなくなります。
そして、制度的欠陥があるにもかかわらず、何の疑いもなく2倍3倍の医療費を請求するという事実の根本には、「外国人の命と健康」の軽視、差別があるのではないかと感じています。
このことを誰に訴えればいいのかわかりません。厚労省の方は「病院の経営には口出しできない」という趣旨のお話をされていました。
「どうすれば日本に暮らす人たちの命や健康を守れるのか」という視点に立った議論がいま必要です。

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