仮放免者と医療:2022.3.8 国会質疑

2022年3月8日、参議院法務委員会において、山添拓議員が古川禎久法務大臣と山本麻里厚生労働省社会・援護局長に対して、「生きていけない」仮放免者生活実態調査(https://yumaosawa.com/?p=482)を踏まえて、仮放免者の医療保障について質問しています。
以下に、①国会質疑の詳細、②その問題点について示しました。

■国会質疑
□山添議員
仮放免をされても、就労制限や移動制限でその生活は厳しい、著しい困難を伴います。特定NPO法人北関東医療相談会がちょうど今この時間に記者会見を行って、仮放免者の生活実態調査の結果というものを公表しています。これ日本で初めての実態調査です。貴重なものだと思います。支援団体が支援している仮放免者など、二十七か国の百四十一人から回答が寄せられたものだと伺っています。
これ私も拝見して、大臣も後ほど見ていただきたいと思うんですが、生活が苦しい、とても苦しいと答えたのは八九%でした。就労が禁止されているために、年収ゼロ円という方が七〇%です。借金があると答えたのが六六%。家賃、服や靴、生理用品、子供の教育費、生活の全てにおいて困難があるという実態が語られています。
大臣、こういう仮放免者の生活実態についてどのように認識されていますか。

□古川法務大臣
一般論として、入管法に違反して退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することが原則であります。仮放免中の生計は、本人の資産や身元保証人や家族の支援等によって賄われることをこれは想定しております。仮放免された外国人につきましては、退去強制手続中という立場に鑑みまして、これは基本的に就労を認めておりません。また、入管行政の一環として、国費による生計等の支援を行うことも困難だというふうに考えています。  
しかし、もっとも、これ、生活ですとかあるいは健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援の必要性というものはもとより承知をしておりまして、これまでも入管庁としては、この仮放免中の外国人から連絡や御相談があれば個別に対応させていただいているところであります。

□山添議員
個別に対応していると言うけれども、その結果がこうして、生活苦しい、生きていけない状況だという実態に現れています。  
日本に家族がいるとか、あるいは母国では迫害される、にもかかわらず日本で難民認定がされない。帰らないのには理由があるわけです。しかも、今コロナの感染拡大の状況もあります。送還忌避だと決め付ける入管の姿勢そのものが問われていると指摘したいと思います。
とりわけ医療の問題は深刻です。経済的な問題で医療機関を受診できないと答えた人が八四%、経済的余裕があれば治療したい病気やけががあると答えた人は七九%に上りました。  
国民健康保険に加入できませんので、窓口負担一〇〇%ですね。難しい手術を必要とするような場合は大きい病院を紹介してもらうわけですが、健康保険に入っていませんので医療ツーリズム扱いとなって、高いところでは二〇〇%、三〇〇%、これはもう支援の皆さんも支え切れない、そういう実態があります。  
無料低額診療事業を行っている医療機関が仮放免者を受け入れる場合があります。しかし、その医療費は医療機関の負担となって、医療機関自体の経営に影響を及ぼします。コロナで経営難ですからなおさらです。  
これは厚労省に伺いますが、無料低額診療を行っている医療機関が高額な治療費を要する無保険者を受け入れた場合に、医療費を補填するような仕組みはありますか。

□山本社会・援護局長
無料低額診療事業は、社会福祉法第二条第三項第九号の規定に基づき、生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う社会福祉事業でございます。委員御指摘になりました無料低額診療事業を実施する医療機関に対して当該医療機関が負担した医療費を補填する仕組みはございませんけれども、法人形態によっては税制上の優遇措置を講じているところでございまして、私ども、この事業につきましてしっかりと周知をしていきたいと考えております。

□山添議員
税制優遇は一定の役割果たしていますけれども、受入れの規模に応じて変わるものではありませんので、受け入れれば受け入れるほど赤字がかさんで経営に影響を及ぼすという状況があります。  
入管施設ではまともな医療を受けられず、仮放免者は就労を禁止されて、医療費も高額になり、生活保護の適用もないという実態を、その一端をお伝えしましたが、これはやはり、一人の人間として尊重する、そういう制度とその運用への改善が必要だと、このことを述べまして、質問を終わりたいと思います。  
ありがとうございます。

■問題点
①何も対応しない入管
入管は「生活ですとかあるいは健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援の必要性というものはもとより承知」しているのに何も対応していません。
「仮放免中の外国人から連絡や御相談があれば個別に対応させていただいている」ということですが、少し前に心不全の方の通院について相談をしたところ、担当官の方から「すみません、私たちには対応することができません」とのお話がありました。
被収容者処遇規則30条には「所長等は、被収容者がり病し、又は負傷したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じなければならない」との規定があります。この規定を仮放免者にも適用すべきです。

被収容者処遇規則 | e-Gov法令検索
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②実態を見ていない厚労省 ー医療機関はもう限界ー
山添議員は仮放免者が医療にかかれていないこと、病院の経営が打撃を受けてることを踏まえて、無料低額診療事業を行う病院など高額な治療費を要する無保険者を受け入れた医療機関への経済的支援について質問しています。無料低額診療事業を行っている病院が大変なことになっているということです。
しかし、それに対して、厚労省は「この事業につきましてしっかりと周知をしていきたい」とだけしか答えていません。「周知」だけでは意味がありません。具体的な経済的支援が必要です。
前に移住者と連帯する全国ネットワーク主催の省庁交渉で厚労省の方がお話されていましたが、実態をご存じないんだなという印象を受けました。医療機関や支援団体側からは、大変なんだということをデータと事例をもって示す必要があると感じています。

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