「どういった外国人なら生活保護を利用できますか?」という質問をよく受けます。
この点、在留資格の知識もないとややわかりにくいと思います。
そこで、今回は以下の3点にわけて、上記質問にお答えしていきます。
1.入管法別表第2の外国人は生活保護を利用できる
上の図をご覧ください。これは生活保護を利用できる外国人と利用できない外国人を示したものです。
外国人(外国籍者)が日本に滞在する場合、原則、在留資格を持っている必要があります。この在留資格は色々と細かく分かれているのですが、大きく「別表第1」と「別表第2」のカテゴリーに分けることができます。
◆別表第1の外国人
「別表第1」の外国人は、就労活動等に制限(就労内容や就労時間)のある外国人で、例えば、留学生や技能実習生です。このカテゴリーの外国人は生活保護を利用することができません。
今回の投稿の本筋からはやや逸れますが、当然ながら、このカテゴリーの外国人も生活に困窮することがあります。留学生、インド料理のコックさん(技能)から相談を受けたことがあります。コックさんはコロナのあおりを受けてホームレス状態になっていましたが、生活保護は使えないし、他の制度も使えないしで、なすすべがありませんでした。セーフティネットなんてものはなく、職を失ったらそのままホームレスです。この間ずっと人手不足が叫ばれていますが、こんな国に来たいと思えるでしょうか。
なお、生活保護を利用できない外国人は、2020年6月末現在、約138万5000人、在留外国人のうち約50%となっています。138万5000人の外国人は生活に困窮してもホームレス状態になってもなんのサポートもないのです。
社協の貸付(緊急小口資金・総合支援資金)を利用できる外国人はいます。しかし、貸付を受けられるかどうか判定されますし(落とされることもある)、そもそも貸付なので返済しなければなりません。最近、別表第1の外国人家族が社協の貸付を借りて何とか生活していたが返済金額が高額になってきたので貸付を辞退したという話を聞きました。かといって、なにか生活を保障する制度はなく、民間支援団体が食料を送っているという現状です。なぜ「共助」である民間支援団体のサポートが「最後のセーフティネット」になっているのでしょうか。
社協の貸付を受ける外国人が多いという報道がありました。それは当然の帰結だと思います。それしか制度がないのですから。しかし、先ほど示したように、それも限界です。生活保護を適用すべきです。
◆別表第2の外国人
「別表第2の外国人」は就労活動に制限がなく、自由に働いてよい外国人です。例えば、永住者や定住者です。このカテゴリーの外国人は生活保護を利用することができます。「別表第2の外国人」ではありませんが、特別永住者も同様に生活保護を利用することができます。
ただし、この場合の保護は権利として認められたものではなく、あくまでも「行政措置」として行われているものです。その問題性は多々ありますが、また別の機会にお伝えします。
保護の内容は日本国民に対する保護とほぼ変わりません。「外国人だから日本人よりも保護費を少なくしてしまえ」ということはしないようになっています。しかし、仮にそんなことをされてしまった場合、外国人は法的に文句を言うことができません。権利として保護が認められていないからです。泣き寝入りです。実際に、1950年代はそのようなことが起きていました。詳細は前に書いた記事をご覧ください。
2.入管法別表第1の外国人のうち「特定活動」の外国人も利用できる場合がある
先ほど「入管法別表第1」の外国人は生活保護を利用できないとお伝えしました。しかし、「特定活動」の外国人なら利用できる可能性があります。
これは『生活保護手帳 別冊問答集』といって、生活保護ケースワーカーの皆さんが使う資料です。正確な言い方ではありませんが、厚生省から各自治体への指示が書かれています。
写真2枚目に「なお…特定活動の在留資格を有する者のうち日本国内での活動に制限を受けないもの…について疑義がある場合には、厚生労働省に照会されたい」と書いてあります。これは、「特定活動」の在留資格を持つ外国人のうち、就労可の許可が出ている外国人は保護の対象になりうるから厚労省に問い合わせしてくださいということです。
私の経験上、運用としては、市区町村の副事務所に申請→市区町村が都道府県に照会→都道府県が厚労省に照会→厚労省が都道府県に結果を伝える→都道府県が市区町村に結果を伝えるという流れになっていると思われます。
なお、「特定活動」で就労可の外国人の中に、就労時間を制限されている外国人もいます。私は就労時間を制限されている外国人の保護申請はしたことはありませんが、福祉事務所からはこの点を聞かれました。どう判断されるかわかりませんが、就労時間に制限のない外国人は保護を利用することができています。
ある相談を受けました。「ある自治体に『特定活動』就労可(制限なし)の外国人と一緒に保護申請に行ったのだけれども、『「特定活動」の外国人は保護を受けられません』と言われて追い返されてしまった」とのことでした。
私はそんなことはないと思い、その自治体に電話しました。そうしたら担当者の方が「『特定活動』の外国人は生活保護を受けられません」と返答がありました。私は上記資料のことを伝えつつ、まずは厚労省に照会してくださいということを伝えました。そうしたところ、保護を利用することができるようになりました。
担当者の方はこの制度を知らなかったのかもしれません。でも、保護申請中に担当者の方から「今回は例外的に特別に『特定活動』の外国人に保護を出すことにしています」「大澤さん、『特定活動』の外国人にも保護が出せることがわかったら困るので広報しないでください」と言われたので、意図的な水際作戦だったのかもしれません。
いずれにしても、生活に困窮している「特定活動」就労可の方がいたら、上記書類をもって福祉事務所に申請に行って、「厚労省に照会してください」とお伝えください。
3.在留資格がなくても諦めない
「入管法別表第2」と「特定活動」就労可の外国人は保護を利用することができるわけですが、それ以外の外国人はどうなってしまうのでしょうか?先ほど示したように、かなり厳しく、生活や生存が守られていない状況です。
しかし、これら外国人に対して生活保護を行ってはならないわけではありません。それは自治体が裁判の中でも宣言しています。詳細は拙著「地方自治体による外国人保護 ―通知に基づく保護の限界―」をご覧ください。
実際に、末期がんで入院中の仮放免者に保護を認める自治体がありました。命の危機に瀕した場合には、保護してくれる心ある自治体もあります。
最後まであきらめないで福祉事務所にも根気よく相談する必要があります。
さいごに、今回は生活保護の対象者とその課題についてお伝えしてきましたが、やはり、生活保護の対象者を拡大しないことには、この問題は解決しないと思います。そこらへんのことはimidasで書きました。よろしければご覧ください。https://imidas.jp/jijikaitai/f-40-223-21-08-g853
目の前で苦しんでいるのに助けられないことが多いです。外国人の命と生活を守る法制度を求めます。