この記事では、
①在留資格の有無にかかわらず外国人の困窮化が進んでいること
②日本に暮らす外国人の50%程度が生活保護の利用を認められていないこと
③結果として社会福祉協議会の貸付に外国人が殺到していること
④そしてそれは給付ではなく貸付なので返済しなければならないがそれは極めて困難であること
⑤制度的欠陥から困窮外国人が増加し固定化されてしまう可能性があること
を指摘します。
これはあまり指摘されてきていないことです。しかし、支援団体や社会福祉協議会など現場の支援者は感じていることだと思います。早急な制度的対応が必要です。
① 在留資格の有無にかかわらず外国人の困窮化が進んでいる
本論に入る前に簡単に日本に暮らす外国人の状況を確認します。
2020年12月現在、日本に暮らす外国人(総在留外国人)は292万8940人です。これは日本の総人口の2.3%です。この総在留外国人は在留資格を持つ外国人ですが、在留資格のない外国人である非正規滞在者は2021年1月1日現在で8万2868人、仮放免者は約3000人と言われています。このほかに入管収容者などもいますが正確な数字はわかりません。
このように日本には300万人程度の外国人が暮らしていますが、現在、これら外国人の困窮化が拡大しています。
2021年5月3日と5日、生活困窮者支援団体が外国人支援団体とともに東京都内の教会で開催した「ゴールデンウィーク大人食堂」には2日間で約150人もの外国人の相談がありました。こうした相談会では今まで見たことのない数の外国人が押し寄せている状況でした。
また、9月13日付のNHKのニュースで北海道滝川市で外国人向けの食料配布会が行われたという報道がありました。私自身すべてを網羅しているわけではありませんが、このような困窮外国人向けの食糧支援は報道されるもの・されないもの含めて全国で行われています。ニーズがないところで食糧支援は行われません。つまり、ここからは全国的に困窮外国人が増加していることがわかります。
② 日本に暮らす外国人の50%程度が生活保護の利用を認められていない
さらに、2021年7月8日付のABEMA TIMESでは、コロナのあおりを受けて解雇され、ホームレス状態になってしまったベトナム人技能実習生の話が示されています。
私もインド出身のホームレス状態の方から相談を受けたことがあります。彼は来日20年以上で、技能ビザでコックさんとして働いてきました。しかし、コロナの影響で失職。ホームレス状態になってしまいました。こういう場合、生活保護などを利用して住居や食糧を確保することになるのですが、外国人の場合はそれができません。何も支援制度がないので、ずっと路上生活をしなければならないのです。彼の場合はたまたま支援団体のシェルターが空いていたのでそこに入ることができました。支援団体の支援が最後の頼み、セーフティネットになっています。しかし、支援団体による支援には限界があります。支援団体に繋がれない困窮外国人も沢山います。この人たちは絶対的な困窮状態に押し留められた生活を強いられています。
この点に関して、筆者が「在留外国人統計」をもとに計算したところ、生活保護を受けられない外国人は日本に暮らす外国人の48.8%(143万24人)となっています。これら外国人は生活に困窮しても生活保護を受けられず、ホームレス化しても家も食料も何も得られないのです。
③ 結果として社会福祉協議会の貸付に外国人が殺到
現在、社会福祉協議会を窓口にして、コロナの影響で生活に困窮している世帯に対し、政府のお金を無利子で貸す特例貸付(緊急小口資金と総合支援資金)が行われており、合わせて最大200万円まで借りられるようになっています。外国人も申請することが可能で、審査に通れば貸付を受けることができます(https://migrants.jp/news/office/20200729_1.html)。
この件に関して、2021年5月2日付の下野新聞で、栃木県ではこの貸付の申請をした人のうち、4割が外国人であることを明らかにしています。また、群馬県大泉町でも申請者のうち緊急小口資金は82.1%、総合支援資金は75.6%が外国人であったことが明らかにされています。ある東京都の区でも申請者の2割程度が外国人であったという話を社会福祉協議会の方から聞きました。
先ほど確認したように、日本の総人口に占める外国人の割合は2.3%です。それに対して、社会福祉協議会の貸付に申請している外国人は、地域にもよりますが、20~80%になっています。ここからは外国人のうち困窮している人の割合が高いことがわかります。
では、どうしてこのような状況になっているのか。それは先ほど確認したとおり、生活に困窮した外国人は生活保護を受けられないからです。何も経済的保障をする制度がないからです。その中でもかろうじて社会福祉協議会の貸付は外国人にも門戸が開かれていて、困窮した外国人は生活のために殺到したのだと考えられます。
④貸付なので返済しなければならないがそれは極めて困難
しかし、社会福祉協議会の貸付を受けられるかどうかは社協が判断するので、当然ながら、貸付さえ受けられない外国人もいます。アフリカ出身の仮放免の方は、生活が困り苦しいので申請をしましたが、返済の見込みがないということで貸付を受けられませんでした。ある社会福祉協議会の方は「多くの外国人の方が相談に見えているが、断らざるを得ない場合もある。断ってしまった方々がその後どのような生活を送るのだろうか、生活できるのだろうかと心配になる」と話していました。貸付さえ受けられない外国人の生活は極めて困難です。
さらに、そもそもこの制度は給付ではなく貸付です。将来的には返済しなければなりません。ある中東出身の方は100万円以上貸付を受けていましたが、辞退しました。理由は「返せる見込みがないから」とのことでした。では、辞退したら生活が良くなるかというと全くそうはなりません。何も生活を保障する支援制度はありません。生活はつらいままです。
2021年7月現在、厚労省は住民税非課税世帯の場合は貸付の返済を免除することができると示しています。しかし、住民税非課税世帯という要件は厳しく、免除されない外国人が多くなる可能性があります。これは日本人困窮者についても同様です。
⑤ 制度的欠陥から困窮外国人が増加し固定化されてしまう可能性
これまで見てきたように、外国人のうち50%程度は生活に困窮しても生活保護を受けられません。食べるものもなく、住むところもなく、そしてそのような状況から改善できる仕組みもありません。
かろうじてある社会福祉協議会の貸付は、給付ではなく貸付であって返済しなければなりません。また、貸付さえも受けられない外国人もいます。
今後も生活に困窮する外国人は増えることが予想されます。しかし、制度的にこれら外国人の生活を保障する仕組みは全くもってありません。このままこの問題を放置していれば、日本社会に困窮化する外国人が溢れかえってしまうことになります。極めて問題です。この問題への対応方法は様々ありますが、そのひとつが困窮外国人に対する生活保護の適用です。詳細は以下の記事で書きました。
この問題はあまり指摘されてきませんでした。国や自治体はこの「時限爆弾」が爆発する前に早急に対応をすべきです。