2021年9月28日付のつくろい東京ファンド・稲葉剛さんの記事。
稲葉剛さんと桜井啓太・立命館大学教授が、中野区による生活保護ケースワーク外部委託問題を皮切りにNPOと行政の関係性について論じています。
この記事には様々な論点があって、どれも重要なテーマなのですが、私は特に「『公』の問題を『民』の責任に転嫁すること」の問題性を感じました。
記事は生活保護行政の話ですが、実はこれは外国人分野でも行われようとしていました。
2021年5月、入管法改定案が取り下げられ、廃案になることが確定しました。
この廃案になった入管法改定案。そこでは「監理措置」という仕組みが検討されていました。これは親族や支援者が「監理人」となり入管収容者が入管施設外で生活できる仕組みでした。しかし、監理人が報告しなかった場合などに罰則が設けられていました。
監理人が生活の面倒をみて、かつ、それを逐一入管に報告し、報告しなかったから再収容したり罰を与えたりする。ここに入管の責任性は全くありません。
これは、本来であれば、入管が収容を解かれた者の生活などの責任を持たなければならないのにも関わらず、それを法的に民間の支援者の責任にしてしまうという悪法でした。「民間の支援者が責任をもって本人の支援をすること=入管は支援しない」「民間の支援者がそれを守れないなら再収容する・罰を与える」「入管は法に従って動いているだけだ」ということが可能となっていたのです。
ちなみに、2021年6月25日、上川陽子法務大臣は記者会見の場で、「仮放免中の外国人に生活上や健康上の問題がある場合には,所轄の地方入管等に連絡・相談をいただければ,個別に適切な対応を検討することとしている」と述べています。現実、入管は適切な対応をしてはいませんが、建前上は、責任は「公」にあることが明らかです。
改訂入管法案は廃案になったので良かったですが、これと同根のことが中野区で行われていました。きっと多くの分野での同様のことが起きているのだと思います。
改めて「公」の役割とは何かを考えさせられました。