「人文社会系博士課程から非アカデミックキャリアへの移行」を読んで

元濱奈穂子・福島由依・大野真理子・二宮祐(2025)「人文社会系博士課程から非アカデミックキャリアへの移行 : アイデンティティ変容に至る時間的径路に着目して」『大学教育学会誌』47 (2), 71-81。
※第21回(2025年)大学教育学会奨励賞受賞論文

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この論文の内容は、私が博士課程にいる間、その後、アカデミックキャリアではないところにいる今も考え続けていることです。
「研究者」と「支援者」のアイデンティティや私の目指すところについて悩むことが多く、他に誰か同じ悩みを書いていないだろうかと様々文献を探していました。いわゆる理系の非アカデミックキャリアについての文献はありました。しかし、いわゆる文系・社会科学系のそれを見つけることをあまりできませんでした。理系・文系問わず、非アカデミックキャリアに移行した後のサクセスストーリーが中心でした。アカデミックキャリアでも生きていけたけど、非アカデミックキャリアの方が未来が見えるからという趣旨の内容が多かったような気がします。
私は、自分自身の研究者としての能力の限界を感じつつ、困窮者支援の現場で支援活動をすることと同時に、それに関連する研究をする意味は果たしてあるのだろうかと感じていました。研究でしかできないこともあると思いつつ、それが何かもよくわからず。
両方やったらいいのですが、両立は経済的時間的になかなか大変なことですし、支援に全振りしてしまった方が効率的ではないかとも感じていました。研究する理由が必要でした。
こうしたことを考えていた背景の一つに、博士論文を書きあがる過程での疲弊はあったのだと思います。博士号を取得してから5年が経過した今、専業研究者は難しいだろうけど、支援者としてのアイデンティティを持ちつつ、研究は続けていきたいと感じています。

そんな中で、上記論文をたまたま見つけました。先行研究レビューでも示されているように、この種の日本の研究は珍しいです。
研究課題へのアプローチ方法は私の専門外のことでどう評価したらよいかはわからないのですが、納得感のある考察でした。今後の課題について「本稿の対象者の移行経験は『自己実現の軌跡』の物語に回収された状態で語られていると考えられ、『個人的危機』の只中の語りと同一ではないことも留意すべきである。今後は、本稿が同定したOPPやBFPに現在いる人々による、『自己実現の軌跡』に回収されていない語りとの比較を行うことで、本稿の知見を吟味していく必要がある(6)」。「6)たとえば、非アカデミック職を得た後に研究を継続している人が、研究を続ける自己をどのように語るのかについて調査することなどが考えられる」と示しています。
まさに私の状況なので、是非、研究を行っていただければ嬉しいと勝手ながら考えています。

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